第016回国会 本会議 第8号
昭和二十八年六月十七日(水曜日)
 議事日程 第八号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑

○議長(堤康次郎君) 北れい吉君。
    〔北れい吉君登壇〕


○北れい吉君 私は、主として総理大臣に対して、日本独立以後の道義の高揚、国民精神の高揚の立場から、広い意味の綱紀粛正について質問をいたします。(拍手)

 私の綱紀粛正に関する質問は、綱紀紊乱を意味するものでは必ずしもありません。綱紀の弛緩、綱紀の頽廃を主として意味します。御承知のごとく、今度の吉田内閣は、古代模様と近代主義とをまぜまして、戦後の優秀なる若い大臣を出し、また東条内閣、小磯内閣のいわゆる敗戦内閣の閣僚中、罪の軽い二等閣僚もしくは三等閣僚を(笑声、拍手)抜擢いたしております。私に言わせれば、戦後の日本民主化に何らの貢献なく、何らの経験なき者が、俄然として吉田総理の好みによつて出たのでありますが、この抜擢の理由いかんということをお尋ねいたしたい。私は、今月巣鴨に行きまして、A級犯に二度会いました。これらの諸君は何を考えているかということは、ここでは御遠慮して申し上げません。とにかく東条内閣、小磯内閣において、戦争が成功すれば、総理大臣は大勲位、公爵となり、閣僚は少くとも勲一等、伯爵くらいにはなる。(拍手、笑声)しかも、それが敗れた場合に、まあ罪は大して受けず、もちろん立候補の資格がある以上は、立候補して、国民が投票するのは、これはあたりまえでありますが、総理大臣がことにこれらの諸君を任命した理由いかん。政治の根底たる信賞必罰の原理にそむきやしないかと考える。(拍手)
 まず、ドイツのカイゼル時代の閣僚は、ワイマール憲法ができた後には、一人も閣僚になつた者はありません。ヒトラーの閣僚中、第二次大戦の敗戦後は、一人も閣僚に選ばれた者はありません。日本人は、そこに行くと、人のうわさも七十五日、忘れつぽい。過去をして過去を葬らしめる。罪を犯しても、水をかぶつて、はらいたまえ、清めたまえと言えば、もう罪障消滅、あつさりしたものです。他人の責任を問うことのできない者は、自己の責任を感ぜないやからであります。これが日本の再建を妨げる。これを吉田総理にお伺いします。しかし、国会は、閣僚の信任、不信はかつてに問えます。御承知のごとく、今日は総理大臣が閣僚をかつてに任命しますが、憲法第十五条で、公務員の選定とこれが罷免は国民の基本的人権であるから、われわれは、不適当の閣僚があつたならば、ただちに基本的な人権を発揚して処置をいたしますから、あらかじめ御承知を願います。

 ところが、次に綱紀粛正の問題について申し上げれば、選挙違反の非常に多いことであります。ことに、自由党の二百二名中、二十一名も関係者が出ている。戦争前におきましては、選挙違反であろうが、涜職事件であろうが、涜職に関係のある、起訴されている人は公認しなかつた。それが敗戦後、道義がすたれまして、どしどし公認して、大手を振つて当選して来ている。これについて何人も責任を問う者のないのを私は遺憾とする。また、私の見るところによれば、吉田総理は側近者を利権の地位にあまりに多くつけている。たとえば、女婿麻生君を九州電力の会長にする、側近第一号白洲君を東北電力の会長にする。従来の総理大臣で、自分の側近者をそういう権益の位置につけたものを、私は聞かないのであります。(拍手)それがために、只見川の問題のごときは無用な紛糾を与えておるのであります。これについて吉田総理の御所見を承りたい。

 次に、綱紀粛正の問題と関連して、行政整理の問題であります。放漫なる官庁の組織、多数の官僚、この貧乏国には少し負担が重過ぎる。そこで、今度の各大臣のお話のうちにも、ぜいたく品の輸入禁止、国内の生産を高めるとか、いろいろ初めて申されましたが、私は、綱紀粛正のためには、国会も綱紀粛正の範を示す。――チヤーチルが総理についたときに、みずから一割の減俸をやつて、国民と耐乏生活をともにいたしました。そこで、国会も、議員会館の問題、あるいは自動車の問題等について、多少自粛する必要がないかと考えます。また官庁も、徹底的の行政整理をせんがために、まず大臣を整理したらよろしい。(笑声、拍手)第一等国の大臣より数がふえております。無任所大臣のごとき、商売なしの大臣は全部整理してさしつかえないだろうと私は考える。(拍手)そうして、まずみずから範を示して下に及ぼせば、私は、上下こもごも利を征して国危うしという孟子の警告した言葉が当らないようになると思います。総理の御意見を伺います。

 その次には、総理のお話の中にありましたが、やはり行政監督官を設けたいと言いましたが、これは官庁に対するのみならず、公社、ことに国策的の銀行――日本銀行、興業銀行、勧業銀行その他開発銀行等に徹底的な監視機関を私は設ける必要があると考えます。昔、支那の独裁君主時代にも、御史とか諌議大夫というものがありました。死を冒して当時の大臣の非行を直接天子に申し上げたことは有名な史実であります。その独裁政治に対してもそういう監視機関があつたのであるから、民主主義時代においても、なおさら国会を中心にした委員を選んで、徹底的な監視をやらなければならぬと考えます。総理の御意見を伺いたい。(拍手)

 それから第三に保安隊の問題でありますが、総理はこれについてあまり申されません。いわゆる黙秘権を行使しております。黙秘権を行使しておるのは、うそとは違うので、うそは責任の追究はできますが、黙秘権では責任の追究のしようがありません。そこで、私はただ、今までに申されたことについて伺いますが、吉田さんは、再軍備反対である。自衛力の漸増には賛成である。ところが、自衛力というものは軍力よりは意味が広い。食物の自給自足、国民精神の高揚、その他いろいろ産業の発達などが背景でありますが、何としても自衛力の根底は戦力であります。ところが、戦力が自衛力の根底であるのに、戦力は憲法に禁止せられておる。その戦力を離れた自衛力というものは、いかにして漸増するか。たらふく食つて、ぜいたくな着物を着て、ぜいたくな自動車に乗つて歩けば、自衛力は増進したと考えられるか、私はこの点を伺いたい。私の見るところでは、保安隊も戦車を持ち、バズーカ砲を持ち、さらに飛行機を持ち、高射砲まで与えられておるのであるが、これは外敵に対する備えであつて、内敵に対する備えではないと思う。これを警察隊のごとく言うのは、国民の目を欺くものであります。私は、これでは、MSAというものの性格が明らかにならない限りは、予算案にも賛成しかねます。しかし、日本の経済が逼迫しておることは事実でありますから、ひもつきでなく――相互援助条約によつて、アメリカの要求によつて日本の軍隊が外へ出るという条件でなく、その他経済上のあらゆる拘束がなければ、私どもは賛成するにやぶさかではありませんが、この内容については、まだ詳しい御説明が外務大臣からもありませんから、今では賛否を保留するという形にいたしておきます。
 とにかく、MSAの援助をいただき、わが国の自衛力並びに国防力を増進させるには、やはり保安隊の性格を明らかにし、専門家によく内容を見てもらい、アメリカと協力して日本を自衛するにあたつても、七百のアメリカの基地がはたして適切であるやいなや、専門家の検討を要する。日本が今日あるのは、軍部が政治を私したといいますが、政治家、ことに外交官が軍事上の知識がないがために、ロイド・ジヨージやチヤーチルのごとき牽制力がなかつた。再びそのあやまちを繰返さないように、政治家は、保安隊の内容、実質について徹底的なる認識を得る必要があると考えますが、この点について、吉田総理はいかなる程度までわれわれに実態を開放し得るか。またMSAの援助の性格も、それと関連して明らかにしてもらいたい。

 それから第四に、この軍備と関係して憲法改正を必要としないかどうか。私は、憲法を続々現に破つておると思う。法律というものは、いくらこしらえても、破る者が多くなれば、励行力は自然になくなる。自然に憲法を無効にする企てであるかどうか。ところが、憲法のある規定には、天皇、摂政及び国務大臣その他の国家公務員は憲法を守ることを誓うとある。一般国民には誓うという規定がない。左派や右派の破壊行動に対しては、憲法上の規定がない。日本では、ややもすれば上の方が憲法を破壊したという歴史があるので、アメリカがことにこれを必要として、一般国民の憲法遵守の規定がない。私は上の方で憲法をなしくずしに破つておるのではないかという疑惑を持つております。ことに、この自衛軍に反対する憲法を平和憲法であるといつて讃美しておる諸君は、せんだつてもある会でありましたが、これは理想主義の現われだ、――私はそう感じません。とにかく、終戦は昭和二十年。二十一年につくつた憲法であります。アメリカの日本に対する政策の第一階段は、徹底的復讐でありました。第二階段は、アメリカ流に日本を改造すること。第三階段は、これではいかぬというので、日本を復興させることである。憲法制定は、第一階段の復讐階段、刑罰階段。日本、ドイツはまる裸にせよ、軍国主義の本場であるから、これをたたきつぶせばよろしい。現にマツカーサー司令部の考えだけじやない。ソ連を含む極東委員会がアメリカにおりまして、憲法制定のときに私ども関係しておりまして、一々極東委員会の許可を受けたのであります。それでありますから、あれは懲罰規定である。あれを理想的の憲法であるなどと言うのは、ちようど刑務所におつて生活安定を喜ぶがごときもので(笑声)われわれと人種が違うように思います。
 日本が独立した以上、占領政策の行き過ぎを訂正するということは、昨年の総選挙後の議会において吉田総理が述べられた以上、占領政策の行き過ぎ是正は米国の憲法を直すことである。ところが、中には、アメリカの政府の憲法ではない、日本の議会でつくつた以上は日本の憲法だと強弁をする方もあります。日本人がつくつたにしては、天皇を国家の象徴などというハイカラな言葉をつくるわけはない。いかに西洋人の思想が織り込まれておるかということは、何としてもわかる。それは、元首という言葉はいかぬということを言われました。象徴という言葉を用いよということは向うの命令で、象徴天皇というものができたのは、結局アメリカのサゼスチョン。たから日本製であるとは言えません。それだから、憲法は、これらの点においても、日本人の手によつて改正を必要とする例証を出しておるのであります。私は、それでなければ魂ができ上らないと思う。もちろん、アメリカの勧めた憲法も、平和的、自由主義的、民主的という大きな線においては、われわれは世界の大道としてこれを採用するにはばからぬのでありますが、あらゆる点において欠点がありますから、吉田総裁は(笑声)政府において憲法改正の準備会を設ける意思はないか、これをひとつ伺います。
 おそらくは、吉田総理がこの憲法をあくまでも擁護せんとするところのものは、一つ吉田総裁あるいは総理に気に食うところがある。大臣をかつてに任令し、または解職し、思い立つたときに何どきでも議会を解散し得る絶対なる権力があるから、吉田さんはこの憲法のある限りは、自己の運命安泰なりと考えておられるのではないか。(笑声)これは、当時この憲法ができたときに、英国のロンドン・タイムスは、何どきでも議会を解散し、大臣の任免黜陟がかつてにできるならば、多数党の首領はフアツシヨ政治をやれるという批評をいたしました。今に至つて思い当るところがあります。

 次に、地方制度と租税制度の抜本的改革、これは政府も絶えず言つておりますが、具体的には何も示されておりません。戦前におきましては、陳情団などはこく少かつたが、このごろは、形式的には憲法上地方の自治が政治的には保障されておるが、経済的には中央依存であります。従つて、陳情団が元に比較すれば数十倍であります。議員会館は今や陳情団の集合所となつておるのであります。それでありまするから、これは経済的に地方が中央に依存し過ぎるのでありますから、地方に財源を与える根本的税制改革をやらなければ、地方自治は名のみであります。吉田総理は具体案をお示し願いたい。今日では、代議士として安んじて当選しようと思えば、地方民の陳情団にサービス百パーセント。あるいはお金をもつて、慰安に隠れて買収する。あるいは節を売つても、側近にあらゆるへつらいをやつても、大臣になつて錦を着て故郷に帰る。この三つのどれかをやらぬと選挙は楽でないことは、皆さん御承知の通りであろうと思います。これを根本的に郭清する必要がある。それには、地方の陳情団をあまり多く上京させない。中央依存をやらないこと。

 次に私の質問したいことは、総理の演説の中にはありませんでしたが、今日の労使の対立のはなはだしいことについて一言質問をいたします。これは小坂労働大臣のお答えを願うのでありますが、私は、吉田自由党内閣はあまり財閥に偏し過ぎていると思う。たとえば、大阪に行けば財界の巨人と相談をする。東京でも財界の巨人と相談する。日本で七割の人口を占めているところの中小商工業の代表者、農民代表者とは意見の交換をしたということはない。(拍手)あまり資本家を中心にして財政投資の相談をやり過ぎる。ついでにあるいは政治献金をお願いするかもしれないが、これはわからない。(笑声、拍手)そこで、労働組合は、議会ではどうせ社会党両派固まつても三分の一以下であるから、闘争を議会外に持つて来る。すなわち、資本家の少数と尖鋭なる労働組合の対立で、土俵の外でけんかが始まる。犬養法務大臣が、労働組合に不穏の形勢があると、こう言つて、あるいは生産管理の勢いもあるし、武装蜂起の勢いもあると言つたが、これも具体的に説明をしてもらいたい。
 これは、公益に関係あるところのストライキを制限するような法律だけでは絶対にできない。進んで資本、産業の経営について、労働組合の代表者にある程度の責任を持たせ、そして労使協調させる。そして、もし意見の調整が困難であつた場合には、議会に労働委員会を設けて、そこへ訴えさせ、その判決を仰ぐ。議会は国権の最高機関であるから、労働争議について発言権がないというのは怠慢の罪であると私は考えます。アメリカにもこの議論が相当出ておりますが、吉田総理にはそういうお考えがないか。積極的にこの労働争議をやめさせる方策がなければならない。ただぼんやりしておつて、保安隊や予備隊をふやして、そして法律をたくさんつくつても、生活が困難になれば、法律は役に立ちません。
 支那人が、私に向つて、かつて言つた。日本人は法律があつて生活なし、われわれは生活があるけれども法律なしということを言つたことがある。もつともと思われるところがあります。私は、法律万能にとらわれず、小坂君などは年少気鋭でありますから、積極的にこの衝突を避ける努力をする何らかのくふうを持つてもらいたいと考えます。あるいは法務大臣から、現在の危険状態を全部暴露してもらいたい。
 それから、吉田内閣の性格として、資本家にのみ重きを置いております。国民の七割を占めておる農民、中小商工業者に重きを置いておらぬ。現に、最近の中小商工業者の困り方は言語に絶するものがある。五月中、不渡り手形は毎日千枚になつております。そうして、平均わずかに十二万円であります。三万枚という不渡り手形が五月に出ております。これで中小商工業者はもう昏倒しておる。池田元大蔵大臣は、五人や十人死んでもよろしいと言うたが、五人、十人どころではない。もう数万の人間が瀕死に迫つておる。いまさら五百万円くらいの中小企業の金融をやつたからといつても、死んだ後に注射をしては間に合わぬと同じことである。これは先に注射しなければならぬ。
 それから米もそうであります。今度だけは食糧と繊維の自給自足計画を岡野さんから発表されました。私も全部共鳴します。しかし、自由党の食糧増産委員会からの、五箇年計画で一千七百万石の献策は、昨年度の予算で葬られたではありませんか。食糧増産を吉田内閣のモツトーとしておるが、むしろ食糧減産内閣であると、自由党の諸君すら攻撃しておる。それはなぜかというと、来年度百万石の増産であるが、人口は百二十万もふえるから、結局毎年三十万石も足らない。食糧問題を徹底的に解決しなければ、かりに米ソに事があつて、アメリカが日本に駐在して戦争をやつたら、二割五分の食糧の輸入はどこから持つて来ますか。戦争前は南朝鮮と台湾から持つて来たが、今はほかから持つて来ようがない。結局戦わずして敗れる。兵隊などがおつても、これは麦わら人形の兵隊と同じであつて、食い物が食えなければどうにもならない。私は食糧増産が先決問題であると思う。
 日本の農民は人口の四割で、二割五分も足らぬという、そういう能率の悪い農民はありません。徹底的に、農地改良、耕種の改良――あるいは山地が八割三分あるから、一部の薪炭林を切つてしまつて、そして、とうもろこし、じやがいも、豆というような雑穀を植える。そして電力が今千八百万キロワツトの発電能力がありますが、わずかに六百万キロワツトしか開発をしておらぬ。五箇年計画で、石橋湛山君は六百万キロワツト、吉田内閣は五百五十万キロワツトの開発を要求いたしております。農村では、次男三男を中心に、今や七百万の失業者。これらに全部植林とか電力開発、耕地改良をやつて職を与え、そうして購買力を増せば、さしあたつて困つておる中小商工業者も助かるのである。
 東南アジアの貿易と言うが、東南アジアは、タイにしても、フイリピンにしても、インドネシアにしても、まだ日本にいい感情を持つておらぬから、開発せざる限りは購買力はない。また無理に輸出をやつても、こつちが輸出超過になれば、向うは輸入超過で、断るに相違ない。むしろ、アフリカとか中東、近東地方――せんだつても、わが党の元代議士であつた原侑君が、アラビアに代表で参りました。サウジアラビアあたりからは五十億毎年油を買うておるが、向うにはわずかに三億しか行かない。あれは英米にあまりよくない国柄であるから行かないが、どんどん行く余地はある。ところが、吉田内閣では、東南アジアの貿易というのは、アメリカの口車に乗つて、スモール・エコー、小さなアメリカの反響にすぎない。
 中共と貿易をすれば、中共から粘結炭、鉄鉱、豆、塩、この四つが来、日本からは、汽車等の輸送機関、トラツク、自転車、電気器具、薬、機織り機械等、輸入したいものはたくさんある。私は日本と中国の貿易促進会の一員でありますが、現にわが党の平塚君に招待状が参つております。私は、中共と貿易しても、わが国が鉄石の構えと、国防を強化すれば、思想に動かされることは万あるまいと思う。ソ連とも、かつて貿易をしておつた。ソ連とも、ある程度の制限付貿易をやつても私はよかろうと思う。その点は、社会党の左派、右派と私は同じ意見であります。(笑声、拍手)私どもは右でもなければ左でもない。世界が平和となり、日本国がよくなれば、いかなる政党の長所でもとつて、わが短を補つて、日本の進展に努力したいと考えます。ただ、社会党の左派、右派の諸君が、アメリカの憲法を理想的の憲法だというようなことを言うのは、大いに気に食わぬところがあります。(笑声、拍手)
 私は、日本の復興には大胆な計画がいると思います。特需がなくなつたから、にわかに岡野通産大臣が食物と繊維の自給ということを言うが、繊維とは何であるか。石炭の繊維、あるいは天然ガスからとる繊維と、もう少し具体的に言つて、五箇年にどれくらいいるか。食い物は、四割の国民が働けば自足自給できます。また衣類は、やればできるのでありますが、具体的の計画、予算の裏づけを話してもらいたい。すなわち、自由党の農林委員長ほどの、予算の裏づけがないのでは困る。ただ思いついた議論では、今日は通らぬと思う。
 私は、これによつて自分の質問の大要を述べましたが、また他日予算委員会で徹底的に数字をあげて質問をいたします。どうぞよろしくお願いたします。(拍手)


    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 綱紀粛正に関してのお尋ねがありましたが、綱紀を紊乱した場合、もしくは法に違反した場合、政府の方針としては、これまでも厳罰に処しており、法の命ずるところによつて遠慮なく処断いたしております。また選挙違反の問題が、ことに自由党において頻発しているだけでも、政府がこれを妨げたとか、あるいは選挙干渉をいたすというようなことは全然いたしておらないことによつても、法規をいかにわれわれは守るに忠であるかがわかると思うのであります。
 次に保安隊の性格でありますが、この問題は、しばしばお答えをし、また質問もしばしば出て、これに対し速記録を、ごらんになれば、よく政府の考え方はわかると思いますから、私はここに再び言葉は重ねません。
 MSAの問題については、先ほど申した通り、政府はアメリカ政府の考え方を十分承知いたした上で慎重に考える。(拍手)
    〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) お答え申し上げます。労使間の問題は、労使双方が自主的に責任を持つて解決することが望ましいことと考えておりますので、政府といたしましても、労使双方が公共の福祉と国民の世論に対する深い洞察の上に立ちまして、労使間の諸問題を円滑に解決いたしまするよき慣行を確立することを期待いたしておるのであります。この判断の資料といたしまして、各種の労働、経済に関しまするところの統計資料を、わかりやすい形で国民に提供することに心がけておるのであります。私といたしましては、労使の問題を、労働問題という、ただ単に一部の労使間の問題といたしませんで、国民の良識によつて解決するという慣行を打立てたいと考えまして、労使のみならず、広く国民間の有識者を網羅いたしましたる労働問題協議会の設置を考えまして、目下その準備を進めておる次第でございまするので、北さんにおかれましても御協力を賜わりたい。(拍手)