「物は物と互(たがい)に相引き互に相近(ちかづ)かんとするの力あり。これを引力という。凡(およ)そ世界中の万物、その大小に拘(かかわ)らず、此(こ)の引力を具(そな)えざるものなし」
「千斤(きん)の鉄の玉を、高さ五十九町余の山の上に持ち上げると、九百九十八斤になる」
「この割合にて段々に高く登り、九万八千里余の月の世界に至らば、この千斤の玉、僅(わず)かに五十匁許(めばかり)になるべし」「空々茫々(くうくうぼうぼう)たる広き天に、数限(かぎり)もなき星の列(つらな)りて、開闢(かいびやく)の始(はじめ)より今日に至るまで、その行列を乱ることなきは、皆引力の致す所なり。星にも種類ありて、遠きものを恒星(こうせい)といい、近きものを遊星(ゆうせい)という。恒星の遠きこと幾億万里という限なし」
「その虫の細なること、一百万の数を集るとも罌粟粒(けしつぶ)の大(おおき)さに及ばず」