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椅子:座の象徴

〔構造と形態〕
1996.10

多摩美術大学
立体デザイン科
高橋士郎

箱根旅行

室内環境の構成要素として、日常の身近な道具をデザインし、生活のパターンを考察する。

椅子は休息するための道具ではない。
休息のためならば、体を横にするほうが良い。
むしろ、椅子は人体の姿勢を維持し規整するための道具である。

椅子は、不定型な人間の心理を支え、品位や威厳、遊び心を演出し、座主を規定する。
椅子の象徴性、性格、意味に着目すべきである。

椅子の美術館




1)椅子のソフトウエアー

座る姿勢:インド語/英語/日本語の動詞
人間工学の寸法:人間の骨格と支持箇所 自律神経   
座る動作と立つ動作:人体重心の移動
背板の機能 肘掛の機能 座の機能   
休息椅子の限界 拘束する椅子への反抗  

椅子のキャラクター 象徴性
文化 スタイル 様式 ダリの椅子 神格の椅子

生活システムとの関連

素材/加工/形態/構造/機能

環境空間との関連

柔軟性 組合せ柔軟変化 変化する空間に追従

機能 スタッキング・ホールディング・ノックダウン   
組合せセクショナル(モジュール単位) シリーズ   
セクショナルチェアー(単体独立した存在単機能単独使用のいすではなく、環境システムとの関連)

使用場所 住宅(ダイニングチェアー・リビングチェアー・ベッドルーム・AVBルーム・室内面積の設定))公共( )店舗(飲食

使用者  個人 公衆 年令 体型   
衣服との関連・裸体の為の椅子

所有者  固定 移動 保守 修理 寿命 使用目的 談団欒・休息・作業


2)椅子のハードウエアー   

椅子の強度:模型による強度実験
荷重:人体静荷重、衝撃動荷重、繰返疲労、捩剛性

構造:主構造と接合部、材料特性 モーメント計算
構造の博物誌

構成部品の名称:貫の位置 笠木 束   
座 布の固着   
脚 三本脚 プラパート   

スチールバイプ/スチールロッド/キャンバス地/ウレタン軟質発泡/木材/ゴム/組立金具/プラスチック種類

a.スチールパイプを主構造とする椅子    
構造力学/カンテレバーのモーメント計算/コンプレッションとテンション パイプ断面形状の力学/有効な貫    
材料力学 金属の弾性と破壊限界    
パイプの接合(溶接 ロー付け やとい ダボ ほぞ 捻子 組立金具)    
パンチングメタルの切断面

b.木構造



3)デザインプロセス   

様々な性格をもつ椅子をデザインし、その1/5 模型を多数製作する。
1/5 縮尺模型は、現物の1/125 の材料で製作することができる。
すなわち、ひとつの現物を製作する時間と労力があれば、125 個の模型製作による演習が可能である。
デザインの演習においては、模型での実験が重要である。

鉛筆と紙によるスケッチでは、既得情報の範囲でしか思考することができない。
現実の素材による実験模型によれば、未知の情報が手から伝わってくる。
手で考えることが重要である。

1/5模型 作業効率 労力と費用 提出物   組立図面1/5・部分詳細図1/1(部品・結合)・1/5模型   
厚紙( 1mm厚)を組み合わせて板組構造をつくる。
厚口ケント紙を曲げて組み合わせて曲面構造をつくる。
金網( 4mmメッシュ)を成形してシェル構造をつくる。
その他の素材の組合せ、または複合素材など、自由制作
立方体の単位素を集合して積構造をつくる。
紙筒を積み上げて束構造をつくる。
金属リングを組合わせて組構造をつくる。
木材角棒(10mm角)を組み合わせて組構造をつくる。
木材角棒(10mm角)を組み合わせて梁柱構造をつくる。
木材角棒(10mm角)を接合してラーメン構造をつくる。
針金(太さ 1mm)を曲げてカンテレバー構造をつくる。
ケント紙を折り曲げて折組構造をつくる。
線材を溶着してトラス構造をつくる。
ケント紙(幅5-10mm)を編んで組編構造をつくる。
ひも(張力材)と棒(圧縮材)とで張力構造をつくる。
収縮布地とリングでテンションリング構造をつくる。

プロトタイプ1/1
家具制作図面1/1
意匠図 1/5  
使用状況透視図:レンダリング・模型写真   
パンフレットカタログのデザイン

インスタントファニチャー

椅子は休息するためだけの道具ではない
椅子は人体の姿勢を維持し規整するための道具である 椅子は人体を規整し、不定型な人間精神を支え
品位や威厳、遊び心を演出する
空間の秩序を告知する  テリトリー 上座下座 
存在の象徴 家族の座 ダリの椅子、神格の椅子、シンボルとアイコン、等価変換
拘束する椅子への反抗: 座る姿勢(人体骨格と支持箇所)人間工学の寸法 自律神経
立て籠り 引き蘢り 坐り込み おこもり 交差